日陰逐鎚 茎葉
日陰逐鎚
日向逐鎚 花
日向逐鎚
午膝 刻み
午膝 刻み
牛膝 ごしつ ゴシツ
和名、植物名
逐鎚 猪の子槌 いのこずち イノコズチ
生薬名
牛膝 ごしつ ゴシツ
学名
日向猪の子槌・・・Achyranthes fauriei(薬用植物)

日陰猪の子槌・・・Achyranthes japonica
(薬用に適さない)
分布
逐鎚(いのこずち)はヒユ科ーイノコズチ属に属する植物で、自生地として北海道を除く本州から四国、九州の野山の木陰や道端、
荒地などに生息する多年草の植物です。

イノコズチの名前の由来として中国では逐鎚の茎が牛の膝に似た節があり、茎のふくらみ方が、牛の膝頭(ひざがしら)に
似ているように見えるので牛膝(ごしつ)という生薬名がつきました。

牧野富太郎先生はイノコズチの名前の由来は「豕槌」で節の太い茎をイノコの膝頭に見立てて名づけたと言っております。

牛膝は日本薬局方に記載されています。

牛膝は中国最古の薬物学書と言われる「神農本草経上品」によれば
一名百倍、味苦平、生川谷、治寒濕痿痺、四肢拘攣、膝痛不可屈伸、逐血氣、傷熱火ラン(※1)、墮胎、久服輕身耐老。」
(※1 ラン=火ヘン+蘭)


日本では日本現存最古の薬物辞典と言われる本草和名(ほんぞうわみょう 918年)によると
「牛膝、和名為乃久都知(いのくづち)、一名都奈岐久佐(つなぎぐさ)」という記述があります。
これは猪の子槌(いのこづち)の意味で、イノシシの子(うり坊)の膝頭に似ているということからつきました。

イノコズチには日陰で多く観られる「日陰猪の子槌」と逆に日向で多く観られる「日向猪の子槌」があります。
薬用としては「日向猪の子槌」を使用します。「日陰猪の子槌」は「日向猪の子槌」に比べて根が大きくならないので
薬用としては使用しません。

日本にはイノコズチは雑草として繁殖しており、資源豊富な生薬で、日本で自給可能が出来る数少ない生薬と言えます。

イノコズチの種子は動物の毛や衣服にくっ付いてくるので「泥棒草」や「ひっつき虫」とも言われます。
特徴・形態
猪の子槌の特徴として草丈は50センチから100センチほどです。

根は外面が灰褐色で、あまり肥厚せずにまばらな髭状の根です。
薬用として用いられる根は長くて節が太く、茎が紫色のイノコズチの根は薬効が高いです。
逆に根は細くて節が小さく、茎が青色のイノコズチの根は薬効が低いです。

茎は四角形で節部高くて直立しており、茎は太いです。

葉は柄があって対生し、長楕円形から倒卵形で先が尖っており、葉の長さは10センチから20センチほどあります。
葉のふち全辺で多少波打っており、葉の両面に毛がまばらにあります。葉は薄質で両端は鋭尖形で全緑です。

花は8月から10月ごろの夏から秋に茎の先や葉えきに花軸を出し、緑色の小さな花を穂状花序につけます。
花ははじめは上を向いているが花が散った後果実が出来ると下向きになり、包の先が尖ります。
花の特徴として花弁は無く、萼は5枚ありその萼も外側のが鋭く尖っています。

果実ですが形は小楕円形で、包の先にトゲがあり、そのトゲを利用して動物の毛や衣服に突き刺さって種子を遠くに運ぶ役目を
します。
成分
イノコズチの成分としてイノコステロン、エクジステロン、クルタミン酸、サポニンのオレアノール酸、アミノ酸のアスパラギン酸、
グルタミン酸、セリン、プロリン、グリシン、アラリン、ヒスチジン、リジン、ベタイン、アルギニン、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、
カリウム塩などが含まれています。

他に変わった成分として、イノコズチの根や葉に植物エクジソン(エクダイソン)のイノコステロンやエクジステロンが含まれています。

エクジソン(エクダイソン)は昆虫変態ホルモンと言われ、本来の意味は昆虫の前胸腺から分泌し、成長を促す
ステロイドホルモンです。(昆虫の場合は卵から幼虫、サナギ、成虫に変態します。人間の変態ではありません。)

イノコズチにはエクジソン(エクダイソン)が含まれており、イノコズチの葉を食した昆虫はイノコズチに含まれる昆虫変態ホルモンの
影響で脱皮や成長を促し、成虫化する時間が大幅に短縮されすぐに成虫になります。
使用部位
日向逐鎚(ヒナタイノコズチ)の根(日本薬局方)(生薬名・・・牛膝 ごしつ ゴシツ)
採取時期と管理・保存方法
牛膝の採取時期として秋に根を掘り上げ、水洗いをしたのちに日干し乾燥を行います。
薬効、服用方法
牛膝は日本薬局方によると主として漢方処方用薬であり、婦人薬とみなされる処方及びその他の処方に少数配合される。

他に牛膝を服用する事により浄血作用、利尿作用、通経作用が期待でき、神経痛、腰痛、関節炎、膝の痛み、脚気、
リューマチ、生理不順、利尿などの効果があります。


牛膝を煎じる場合は
牛膝約5グラムから10グラムを水600ccから800ccの中に入れて弱火で15分から20分程煎じて、煎じ終われば薬草は
取り除き、1日数回に分けて服用します。
(味が苦手な方は蜂蜜や甘味料などで甘味をつけても結構です。)

牛膝と他の薬草(重薬、艾葉、ヨクイニン、ゲンノショウコなど)と一緒に煎じて服用しても良いです。

牛膝の粉末の場合は
牛膝の粉末を1日量約3グラム〜6グラムを目安に水またはぬるま湯で1日数回服用するか、お湯に混ぜて服用してください。
(小さじ半分ぐらいが約1グラムです。)

「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合はオブラードに包んで服用しても結構です。


妊娠中の女性は流産の恐れがあるので服用しないでください。
牛膝の薬用酒 
牛膝を薬用酒として服用すると子宮収縮作用による生理痛の緩和、月経促進、腰痛、関節痛、手足のしびれの緩和、
冷え症改善などに効果があります。

牛膝の薬用酒の作り方ですが
牛膝・・・200グラム
氷砂糖・・・200グラム又はグラニュー糖200グラム
ホワイトリカー・・・1.8リットル
(他に色々な薬草を混ぜてミックス薬用酒を作っても良いです。枸杞子や熟地黄などと一緒に漬けても良いです。)

これらの品を容器に入れて約1か月ほど直射日光の当たらない場所で熟成させます。

熟成させる時に出来るだけ空気に触れないようにしっかり密封して下さい。密閉できる容器を使用して下さい。
空気に触れると味が変わる恐れがあります。

10日に1回は中身を2回から3回程振って均等に成分が出るようにしてください。
人によっては味の好みが異なりますので、30日に1回は味見をしてお好みの味であれば薬草を引き上げても結構です。

1か月ほど熟成させたら木綿の布かコーヒー用の濾過紙で濾過しながら薬草を取り出し、1日に杯1杯を目安に服用します。

飲みにくい場合は蜂蜜や水飴、砂糖で味を調えても結構です。

枸杞子や熟地黄などと一緒に浸けて熟成させ、服用すればより効果が高まります。

妊娠中の女性は流産の恐れがあるので服用しないでください。
  
生薬との組み合わせ
牛膝+防己・・・・牛膝と防己を組み合わせることにより腰関節や膝関節、下半身の痛みやだるさを緩和させる作用があります。
漢方処方・・・疎経活血湯

牛膝+ヨクイニン・・・・牛膝+ヨクイニンを組み合わせることにより腰関節や膝関節、下半身の痛みやだるさを緩和させる作用
があります。

牛膝+地黄・・・・牛膝+地黄を組み合わせることにより腰関節や膝関節、下半身の痛みやだるさを緩和させる作用があります。
漢方処方・・・疎経活血湯、大防風湯

牛膝+当帰・・・・牛膝と当帰を組み合わせることによりオ血を改善して生理不順、月経痛、月経困難などの婦人科系疾患症状
を緩和します。あと膝、腰の痛みの緩和にも役立ちます。
漢方処方・・・大防風湯、牛膝散

牛膝+桃仁・・・・牛膝+桃仁を組み合わせることによりオ血を改善して生理不順、月経痛、月経困難などの婦人科系疾患症状
を緩和します。
漢方処方・・・牛膝散

午膝+川骨・・・・午膝と川骨を組み合わせると関節痛や関節に水が溜まったなどの症状改善が期待出来ます。 
牛膝を含む漢方処方
牛膝散

牛車腎気丸・・・済生方

疎経活血湯・・万病回春

大防風湯・・・和剤局方

折衝飲
参考資料
神農本草経ー上品
「一名百倍、味苦平、生川谷、治寒濕痿痺、四肢拘攣、膝痛不可屈伸、逐血氣、傷熱火ラン(※1)、墮胎、久服輕身耐老。」
(※1 ラン=火ヘン+蘭)
その他
東洋医学では
@妊娠中の女性が服用しても良く、お腹の胎児にも良い作用のある生薬や漢方薬を「安胎薬」(あんたいやく)と言います。

「安胎薬」と言われる生薬は・・・木香、黄ゴン(※1)杜仲、艾葉、人参、香附子、黄耆、白朮、白芍薬、蘇梗(紫蘇の茎)、
秦ギョウ(※2)、陳皮、冬虫夏草など
(※1ゴン=くさかんむり+今)(※2ギョウ=くさかんむり+几)


「安胎薬」と言われる
漢方薬は・・・当帰芍薬散、当帰散、白朮散
(3種類共に金匱要略婦人妊娠病脈証に掲載されています。)

A妊娠中の女性には慎重に用いる生薬や漢方薬を「慎用薬」と言います。
「慎用薬」と言われる生薬は・・・
乾姜、ヨク苡仁(※1)、牡丹皮、附子、大黄、五味子、呉茱萸、紅花、枳実、午膝、酸棗仁、
厚朴、桃仁辛夷、薄荷、芒硝、半夏、麻子仁など
(※1ヨク=くさかんむり+意)

があり、牛膝は妊娠中の女性が服用すべき生薬ではありません。
注意事項
@本品は天然物(生薬)で性質上吸湿しやすいものがあります。
そのため保存には十分ご注意ください。保存が悪いとカビ、虫害等の発生する原因になることがあります。

A開封後は直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい場所に保管してください。

B本品には品質保持の目的で脱酸素剤を入れておりますので、一緒に煎じたり、食べたりしないようにご注意ください。

C幼児の手の届かない所に保管してください。

D他に容器に入れ替えないで下さい。(誤用の原因になったり品質が変わる場合があります。)
参考文献
北驫ルー原色牧野和漢薬草大図鑑
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