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ホソバオケラ 花
ホソバオケラ 花
シナオケラ 花
シナオケラ 花
蒼朮 刻み
蒼朮 刻み
古立蒼朮 刻み
古立蒼朮 刻み
蒼朮 そうじゅつ ソウジュツ
和名
細葉朮(ホソバオケラ) 佐渡蒼朮 (サドオケラ) 古蒼(ヒネソウ) 
古立蒼朮 (コダチソウジュツ)  
生薬名
蒼朮 そうじゅつ ソウジュツ 茅朮 毛朮 南蒼朮 山蒼朮 北蒼朮 
茅蒼朮  漢蒼朮 赤朮 
学名
Atractylodis Lanceae Thunh DC (ホソバオケラ)
Atractylodis chinensis  DC Koidzumi  (シナオケラ)
分布
「ほそばおけら」はオケラ属ーきく科の植物で、ホソバオケラの自生地として中国の江蘇省、浙江省、安徽省、江西省、湖北省、
四川省などの中国大陸東部と中国大陸中央部の日当たりの良い草地や山野などでよく見られる植物です。

余談・・・江蘇省や湖北省、江西省で採れるホソバオケラを「茅朮」又は「毛朮」と言い、「茅朮」と「毛朮」を総じて「南蒼朮」
と言います。
日本では「茅朮」又は「古立蒼朮」が精油含有量が多い蒼朮として高値で取引されています。
(精油成分含有量が多い蒼朮ほど香りと効能、効果が高まります。)

「しなおけら」はオケラ属ーきく科の植物で、シナオケラの自生地として中国の黒龍江省、吉林省、遼寧省、河北省、河南省、
山東省、山西省、甘粛省などの中国東北部や朝鮮半島などの丘陵地の日当たりの良い乾燥地でよく見られる植物です。

余談・・・中国東北部で取れるシナオケラは「津蒼朮」又は「山蒼朮」と言い、「津蒼朮」、「山蒼朮」を総じて「北蒼朮」と言います。
蒼朮に含まれる精油成分は北蒼朮より南蒼朮のほうが多く含まれております。

余談・・・シナオケラを「津蒼朮」と呼ぶ由来として中国東北部で採取したシナオケラを中国の都市の天津に集荷したから
こう呼ばれます。

ホソバオケラは日本には江戸時代中期の享保年間(テレビでお馴染みの八代将軍徳川吉宗の時代)に中国より伝来して
栽培をされ始めました。
主な栽培場所として小石川植物園や大和地方(奈良地方)、佐渡地方などで栽培されました。

他に貝原益軒の著作「大和本草(やまとほんぞう)」には白朮、蒼朮(びやくじゅつ、さうじゅつ)に分類して記載しております。

参考・・・大和本草「蒼朮は気味辛烈であるが、白朮はわずかに辛く苦い。白朮は胃を強くして食欲を促進させ、蒼朮は発汗作用
があって熱を下げ、胃内停水を除く。蒼朮を刻んで焼けば、邪気と悪を去り、疫気をのぞく」
と書かれております。

江戸後期に活躍した古方派漢方医の吉益東洞が創薬した桂枝加朮附湯や桂枝加苓朮附湯には蒼朮が用いられています。

蒼朮は日本薬局方に記載されています。

他に蒼朮が配合された薬として奈良県吉野の辻堂に河童がくれた「辻堂錦草」と言う薬があり、これには「桔梗」、「桂皮」、
「甘草」、「莪朮」、「丁子」、「芍薬」、「大黄」、「蒼朮」など21種類が配合されており、主に打ち身、捻挫、筋違い、神経痛、
感冒などに効果があります。
特徴・形態
ホソバオケラの特徴ですが、ホソバオケラは雌雄異株で、草丈が30センチメートルから80センチメートル程の高さになり、
茎は硬くて円柱形の形をしており、枝は上部で枝別れをします。

根茎は不規則に曲がりくねっており、形は円形状で長さは3センチから10センチほどあり、横方向に大きくなる特徴があります。
根茎を切断するとその切断面からカビ状の白色結晶を見ることがあります。
このカビ状の白色結晶は精油成分と言われ、主にβーオイデスモールとヒネソールであると言われます。
後、根茎の断面は特異なにおいがあり、味はわずかに苦いです。

葉は互生しており、葉の形は楕円形又は卵状披針形で葉の長さは3センチから8センチ程あり、葉のふちには細かい鋸歯があり
葉先は尖っております。

ホソバナオケラの花期は8月から10月で花の特徴として茎の頂上に白色又は薄紅紫色の花をつけます。
花の周りに魚の骨のような模様をした総包が二重に包んでいます。

ホソバナオケラの根茎の採取方法と時期ですが
8月から10月の花が咲いている時に根茎を掘り出して(その時にひげ根を取り除かない)水洗いを行い、綺麗になれば日干しを
行います。
十分な乾燥が終わればひげ根を取り除きます。

シナオケラの特徴ですが、草丈が30センチメートルから50センチメートル程の高さになり、茎は硬くて円柱形の形をしており、
枝は上部で枝別れをします。

根茎は円形状で長さは3センチから10センチほどあり、横方向に大きくなる特徴があります。

葉は互生しており、上の葉と下の葉の形は異なり、下の葉の形は卵形で羽状に3から5深裂しています。
上の葉は楕円形又は卵状披針形で羽状に3から5浅裂しています。
上の葉も下の葉も葉のふちには細かい鋸歯があり葉先は尖っております。

ホソバナオケラの花期は7月から8月で花の特徴として茎の頂上に白色又は薄紅紫色の花をつけます。
花の周りに魚の骨のような模様をした総包が二重に包んでいます。

シナオケラの根茎の採取方法と時期ですが
8月から10月の花が咲いている時に根茎を掘り出して(その時にひげ根を取り除かない)水洗いを行い、綺麗になれば日干しを
行います。
十分な乾燥が終わればひげ根を取り除きます。
成分
ホソバオケラの根茎に含まれる成分として精油成分のアトラクチロジン、ヒネソール、βーオイデスモール、エレモール、
アトラクチロン、βービサボレン、αービサボロールなどが含まれています。

シナオケラの根茎に含まれる成分としてアトラクチロジン、 ヒネソール、βーオイデスモール、エレモール、アトラクチロン、
βービサボレン、αービサボロール、ヒドロキシアトラクチロン、アセトキシアトラクチロン、アトラクチロジノール、
アセチルアトラクチロジノールなどが含まれています。

βーオイデスモールとヒネソールはホソバオケラ、シナオケラの両方に含まれていますが、ホソバオケラの方に多く含まれており、
この成分が非常に有効であると言われます。
使用部位
ホソバオケラの根茎(日本薬局方)
シナオケラの根茎(日本薬局方)
採取時期と管理・保存方法
ホソバナオケラの根茎の採取方法と時期ですが
8月から10月の花が咲いている時に根茎を掘り出して(その時にひげ根を取り除かない)水洗いを行い、綺麗になれば日干しを
行います。
十分な乾燥が終わればひげ根を取り除きます。

シナオケラの根茎の採取方法と時期ですが
8月から10月の花が咲いている時に根茎を掘り出して(その時にひげ根を取り除かない)水洗いを行い、綺麗になれば日干しを
行います。
十分な乾燥が終わればひげ根を取り除きます。
薬効、服用方法
蒼朮は日本薬局方によると主として漢方処方用薬である。健胃消化薬、止瀉整腸薬、利尿薬、鎮暈薬、保健強壮薬、鎮痛薬
とみなされる処方及びその他の処方に比較的高頻度で配合されている。

他に蒼朮を煎じて服用すると健胃、利尿、発汗、除湿、瀉剤などの作用があり症状として胃腸病、消化不良、神経痛、関節痛、
関節リュウマチ、眩暈、動悸、息切れなどに効果があります。

参考・・・蒼朮によく似た生薬で「白朮」があり、白朮は健胃・整腸、利尿、鎮痛、補気剤、補脾剤などの作用があり、
蒼朮とは効能、効果が異なります。

蒼朮と白朮の違いですが蒼朮も白朮も共に体内水分を調節して腹水、食欲不振、嘔吐、悪心などの症状を改善します。
しかし蒼朮と白朮には重要な相違点があります。

蒼朮の場合・・・蒼朮は実証で胃腸機能は丈夫又は普通で発汗作用は蒼朮のほうが優れているが、健胃作用、利尿作用は
白朮のほうが優れている。
蒼朮は水毒が原因の神経痛、リュウマチ、痺れ、浮腫などに用いられます。

白朮の場合・・・白朮は虚証で胃腸機能は低下又は弱く、発汗作用は蒼朮が優れているが健胃作用、利尿作用は白朮のほうが
優れている。
白朮は水毒が原因の多汗、胃内停水、胃腸虚弱、嘔吐、眩暈、浮腫、小便不利、胃内停水が原因の胃腸の冷え、胃弱、下痢、
腹痛などに用いられます。

蒼朮を煎じる場合は
蒼朮約3グラムから5グラムを水600ccから800ccの中に入れて弱火で15分から20分程煎じて、煎じ終われば薬草は
取り除き、1日数回に分けて服用します。

蒼朮と他の薬草(ヨクイニン、艾葉、ゲンノショウコなど)と一緒に煎じて服用しても良いです。

蒼朮の粉末の場合は
蒼朮の粉末を1回量約1グラム〜2グラムを目安に水またはぬるま湯で1日数回服用するか、お湯に混ぜて服用してください。
(小さじ半分ぐらいが約1グラムです。)

蒼朮の粉末を単独で服用しても良いが、牛乳、野菜ジュース、スープなどに混ぜて服用しても良いですし、小麦粉と混ぜて
料理に使用されても結構です。

「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合はオブラードに包んで服用しても結構です。
生薬との組み合わせ 
蒼朮+陳皮・・・蒼朮と陳皮を組み合わせることにより、胃内停水を取り去って胃の機能を亢進させ、食欲を増進させる作用
があります。
(漢方処方例・・・平胃散など)

蒼朮+葛根・・・蒼朮と葛根を組み合わせることにより体表にある水毒を葛根が取り去り、体内にある水毒を蒼朮が取り去ります。
(漢方処方例・・・葛根加朮附湯)


蒼朮+茯苓・・・蒼朮と茯苓を組み合わせることにより胃内停水や体内に停滞している水毒を取り除く作用があります。
(漢方処方例・・・補気建中湯、半夏白朮天麻湯
など)

蒼朮+附子・・・蒼朮と附子を組み合わせることにより附子が体内を温めて胃腸の機能や新陳代謝を亢進させます。
そして寒が原因で
体内に溜まった水毒を蒼朮が取り去ります。

そして蒼朮と附子の両方が持つ鎮痛作用が急性、慢性の痛みに効果を表します。
(漢方処方例・・・葛根加朮附湯、桂枝加朮湯、桂枝加朮附湯など)

蒼朮+附子+甘草・・・蒼朮と附子と甘草を組み合わせることにより、この3種類の生薬が持つ鎮痛作用が高まり
急性、慢性の
痛みに効果を表します。
(漢方処方例・・・葛根加朮附湯、桂枝加朮附湯など)
 
蒼朮を含む漢方処方
葛根加朮附子湯

消風散(外科正宗)

疎経活血湯(万病回春)

二朮湯(万病回春)

分消湯(万病回春)

平胃散(太平恵民和剤局方=治一切気)

補気建中湯(済世全書)

半夏白朮天麻湯(脾胃論)

参考・・・上記の漢方処方(他にも多数の漢方処方はありますが、その一部を処方例として書いています。)は症状によって
白朮に変更する場合があります。
参考資料
神農本草経ー上品
「朮、一名山薊。味苦温、生山谷、治風寒湿痺死肌、痙、疸、止汗除熱、消食、作煎餌、久服軽身延年不飢。」


薬徴
「主利水也。故能治小便自利、不利。旁治身煩疼、痰飲、失精、眩冒、下利、喜唾。」
参考・・・上記の薬徴の内容は「蒼朮」について書かれていると言われます。

古方薬議
「味苦温。風寒、温痺ヲ主リ、胃ヲ開キ、痰涎ヲ去リ、下泄ヲ止メ、小便ヲ利シ、心下急満ヲ除キ、腰腹ノ冷痛ヲ治ス。」
その他
昔はオケラ、オオバナオケラを白朮(この呼び名は今も使います。)と言い、ホソバオケラを根が赤いので赤朮(セキジュツ)と
呼んでいました。(根の実物は赤いというよりは薄い黒色のような色)

白朮や蒼朮(赤朮)は「神農本草経」には「朮」としか書かれておらず、白朮か蒼朮かの区別がありませんでした。
参考・・・「神農本草経」の書かれている「朮」の説明を一読すると、「神農本草経」の「朮」は「蒼朮」についての
説明文であると思われます。


逆に「傷寒論」、「金匱要略」に書かれている漢方処方に含まれる「朮」は殆どが白朮になっています。
参考・・・「傷寒論」、「金匱要略」、「金匱玉函経」などの張仲景が書いた医学書は11世紀の宋の時代に編纂されており、
その時に「朮」はすべて「白朮」に変更された可能性があります。
その理由として王冰の書物に「朮=皮を去る。白朮が尤も佳い」と書かれており、王冰が活躍した唐の時代では蒼朮の皮を
取り除いて白色に近い物を「白朮」と呼んでいたと思われます。


白朮と蒼朮を最初に区別したのは古代中国の南北朝時代に活躍した陶弘景で、彼の書物には「朮には白、赤の二種類あり」
と書かれています。

余談・・・蒼朮は直訳すると「蒼い朮」になりますが、青い色はしておりません。
上記にも書きましたように根が赤いので昔は「赤朮」と呼ばれていました。
赤から蒼に変化したのは葉の色が原因かもしれません。(赤朮のほうがカッコイイと思いますが)

蒼朮、白朮共に「朮=オケラ」と日本では読まれていました。「現在もこう言います。」
「朮=オケラ」は昆虫の「オケラ」とは全く関係はありません。

オケラは日本では馴染み深い植物で、古くは万葉集にオケラ(万葉集では「宇家良(うけら)」と記載)を詠んだ歌が3首あります。
(昔は「宇家良(うけら)」と言っていたが段々言葉が訛って「おけら」になったと言われます。)

オケラは昔は疫病草、瘧草(えやみぐさ)と言われていました。
竜胆も疫病草と言われていました。

参考・・・万葉集に載せられているオケラ(うけら)の句
「恋しけば袖も振らむを武蔵野のうけらが花の色に出なゆめ」・・・詠み人知らず

「我が背子をあどかも言はむ武蔵野のうけらが花の時なきものを」・・・詠み人知らず

「安齊可潟潮干のゆたに思へらばうけらが花の色に出めやも」・・・詠み人知らず

他にも仙人や仙薬などの神仙道について書いた古代中国の晋時代に活躍した葛洪の「抱朴子」には「朮」は仙薬の一つに
挙げられており、朮を食すれば高い山に登っても疲れない、雪の中を歩いても寒くない、仙人の林子明が食したら
谷を飛び越えることが出来た。」と書かれています。
参考文献
北驫ルー原色牧野和漢薬草大図鑑
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