浜防風 はまぼうふう ハマボウフウ |
和名 |
浜防風 はまぼうふう ハマボウフウ |
生薬名 |
浜防風 はまぼうふう ハマボウフウ 北沙参 ほくしゃじん ホクシャジン きたしゃじん キタシャジン |
学名 |
Glehnia littoralis |
分布 |
浜防風はハマボウフウ属ーせり科に属する植物で日本では北海道から九州、沖縄の日本各地と朝鮮半島から台湾、
中国大陸の海岸の砂地なら何処にでも見られる多年草の海浜植物です。
6月から7月ころに白い小花をつけますが花が咲く前の早春の若芽や若葉、若茎は日本料理の高級食材としておひたしや酢の物、刺身にツマなどに使われます。
時によっては店頭に並ぶこともあるので「八百屋防風」とも言われます。
浜防風は浴剤として使われ、よい香りで湯冷めしにくいといわれています。
浜防風の根茎は日本薬局方によると真防風の代用品として掲載されており、主に発汗、解熱、鎮痛薬として使用されます。
中国では浜防風の根の外皮を取り除いた生薬を「北沙參(ホクシャジン、キタシャジン)」と言い、南沙参の代用品として
使用されます。
中国では強壮、解熱、鎮咳、止渇、慢性気管支炎などに使われます。
ちなみに南沙参(ナンシャジン)は釣鐘人参(ツリガネニンジン)を指します。
浜防風(北沙参)は古代中国の神農本草経の上薬(上品)に記載されており、内容として
「一名知母。味苦微寒。生川谷。治血積驚気。除寒熱。補中益肺気。久服利人。」
と書かれています。
防風は名前の通り「風を防ぐ植物」と書き、風が運ぶ病(風邪と言います。)
(一般的にはインフルエンザ、風邪、花粉などを指します。)を防ぐ薬草の意味で「防風」と言います。
この効果に昔の人は不思議な魅力と魔力を感じて人間に降りかかる邪気を追い払う儀式に用いました。
その儀式として有名なのがお正月に飲む縁起物のお酒の「屠蘇散(とそさん)」に含まれております。
参考・・・「屠蘇散(とそさん)」について書きますと、屠蘇散の正式名称は「屠蘇延命散(とそえんめいさん)」と言い、
誰が考案したかは諸説ありますが一番有力な説として三国志で有名な華佗(かだ)が考案した説が一番有力です。
屠蘇の意味として「蘇」は病をもたらす鬼を意味し、「屠」は屠る(ほふる)つまり「殺す」と言う意味で、屠蘇を飲めば身体に害する
病気を葬る事が出来ると考えられました。
屠蘇は中国では三国時代に考案されましたがお正月の縁起物になったのは唐時代と言われ、日本には平安時代に伝わり、
時代を経て江戸時代に庶民のお正月文化として浸透しました。
(屠蘇散には浜防風が配合されます。真防風は」江戸時代に渡来知っており、昔は浜防風を使用していました。
現代は真防風、浜防風のどちらかが配合されています。)
防風は日本の砂浜で見られる「浜防風」とは異なります。防風は江戸時代徳川吉宗が活躍した享保年間(1716年から1736年)
に渡来し、小石川植物で栽培されていたが、一時絶滅しました。
しかし奈良県宇陀市大字陀の森野薬草園の創始者で吉野葛製造販売を家業としていた森野藤助(もりのとうすけ)が
復活させました。
それで防風の別名を「藤助防風(とうすけぼうふう)」、「宇陀防風」、「種防風」と言います。
薬用で使用する防風には真防風と浜防風があり、名前が同じ防風ですが薬効は異なります。
真防風は草原などで見られますが、浜防風は海岸などで見られます。
真防風は茎は細くて多く枝分かれをしており、海岸の強い風には耐えられません。
浜防風は太い茎ですので海岸の強い風にも耐える事が出来ます。
真防風は発汗、去痰、関節痛、鎮痛などに用いられますが、浜防風は発汗、解熱、感冒などに用いられます。
近年では防風と浜防風を使い分けることはあまりなく、真防風の代用に浜防風が使用されています。
余談・・・防風は浜防風の他に日本で自生している防風の仲間があります。
日本で自生している防風の仲間として筆防風(ふでぼうふう)(別名 伊吹防風)や牡丹防風(ぼたんぼうふう)、
(別名 五島防風、木防風 長命草)があります。
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特徴・形態 |
浜防風の特徴ですが草丈は5センチから30センチほどで 地上部は背が低くはいつくばっているように見えますが
通常は直立しています。
地上部には白い毛が密生します。
浜防風の根は砂の中に向かって深く成長しますが、地上部は短く成長します。
地上部の花茎は10センチぐらいまでの高さしか成長しませんが、地下部の根は地上部より深く、長く、分枝しながら成長します。
根は黄色味を帯びており、根の太さはやや肥厚で長さが1メートルに達することもあり、根は砂中に真っ直ぐ直下しながら
成長します。
長大な根は薬用として用いいられ、根の形がゴボウに似ているので「浜牛蒡」とも言われます。
根をカットして乾燥させるとセリ科独特の香りがあります。
葉は互生し、葉の形は1回〜2回3出羽状複葉で砂の上で厚みと艶がある葉に成長します。
葉の質は草木植物にしては厚みがあって葉は硬いです。
小葉の形は楕円形か倒卵楕円形で色はやや紅紫色で葉の長さは2センチから5センチほどで
葉先は出頭か円頭で、葉のふちは長くふぞろいの鋸歯があります。
ハマボウフウの花は6月から7月頃に茎の先に20個から40個の花を多数散形花序に密生しながら咲かせます。
果実は丸くて密集して出来ます。果皮には細かい毛があり、果皮はコルク質で稜があり、果実が熟すと中から種子が出てきます。
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成分 |
浜防風に含まれる成分はクマリン配糖体のインペラトリン、プソラレンベルガプテン、精油、オステノールなどが含まれています。
果実にはフェロプテリンや脂肪分などが含まれています。 |
使用部位 |
浜防風の根茎(生薬名 浜防風 はまぼうふう ハマボウフウ) |
採取時期と管理・保存方法 |
浜防風の採取時期は8月から9月頃の気温が高い時に浜防風の根及び根茎を掘り出してから水洗いをし、細かく刻んでから
日干し乾燥します。 |
薬効、服用方法 |
浜防風を服用すると発汗作用、鎮痛作用、解熱作用があり感冒、解熱、頭痛、関節痛などに効果があります。
浜防風を煎じる場合は
浜防風約5グラムから10グラムを水600ccから800ccの中に入れて弱火で15分から20分程煎じて、煎じ終われば薬草は
取り除き、1日数回に分けて服用します。
(少し苦味がありますので苦手な方は蜂蜜や甘味料などで甘味をつけても結構です。)
浜防風と他の薬草(艾葉、ゲンノショウコ、重薬など)と一緒に煎じて服用しても良いです。
浜防風の粉末の場合は
浜防風の粉末を1回量約1グラム〜2グラムを目安に水またはぬるま湯で1日数回服用するか、お湯に混ぜて服用してください。
(小さじ半分ぐらいが約1グラムです。)
「粉末が咽喉に引っかかる」、「味が苦手」などの支障がある場合はオブラードに包んで服用しても結構です。 |
浜防風の入浴剤 |
浜防風を入浴剤として利用すれば身体をポカポカと暖め、風邪予防、血行促進による肩こり、腰痛、疲労回復に非常に効果が
あります。
浜防風に陳皮や柚子皮、ヨモギなどの薬草を併用するとより効果が高まります。
浜防風の入浴剤の作り方は
浜防風約100グラムを布袋に入れます。 (布袋は巾着袋でも、使い古した靴下でも、ストッキングでも構いません。)
布袋に入れた浜防風を約1リットルぐらいの水と一緒にお鍋かやかんに入れ約15〜20分程煮出し、煮出し終われば布袋ごと
浴槽に入れて下さい。(入浴中に布袋を揉むと成分がよく出ます。)
薬草の入浴剤の注意点 @・・・お風呂から出る時には必ず薬草のエキスをシャワーで洗い流して下さい。 薬草のエキスが身体に付着したままにしておくと人によって症状がひどくなる場合があります。
A・・・当日使った薬草の湯は翌日には使用しないでください。当日使った入浴剤は必ず入浴後に処分してください。
B・・・お風呂の残り湯を洗濯機で使用する場合は衣類に薬草の色が付着する場合がありますので注意してください。 |
生薬との組み合わせ |
浜防風+麦門冬+天門冬・・・浜防風と麦門冬と天門冬を組み合わせると乾燥した咳、口渇、咽頭乾燥などの症状を緩和させます。
浜防風+貝母+知母・・・浜防風と貝母と知母を組み合わせることにより咳嗽、喀血などの症状を緩和します。 |
浜防風を含む漢方処方 |
十味敗毒湯
防風通聖散
など |
参考資料 |
神農本草経ー上薬
「一名知母。味苦微寒。生川谷。治血積驚気。除寒熱。補中益肺気。久服利人。」 |
その他 |
特に無し |
参考文献 |
北驫ルー原色牧野和漢薬草大図鑑 |
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