黄連湯(オウレントウ)

生薬構成

半夏 6.0  大棗 3.0  黄連 3.0  乾姜 3.0  桂枝 3.0  甘草 3.0  人参 3.0

黄連湯原文

【傷寒論】 (太陽病、下篇)

傷寒、胸中有熱、胃中有邪氣、腹中痛、欲嘔吐者、黄連湯主之。

黄連三両 甘草三両(炙) 乾姜三両 桂枝三両(去皮) 人参二両 半夏半升(洗) 大棗十二枚(擘)
上七味、以水一斗、煮取六升、去滓、温服、昼三夜二。

【勿誤薬室方函口訣】

此方ハ胸中有熱、胃中有邪気ト云ガ本文ナレドモ、喩嘉言ガ、湿家下之、舌上如胎者、
丹田有熱、胸中有寒、仲景亦用此湯治之ノ説ニ従テ、舌上如胎ノ四字ヲ一徴トスベシ。
此症ノ胎ノ模様ハ、舌ノ奥ホド胎ガ厚クカカリ、少シ黄色ヲ帯ビ、舌上潤テ滑カナル胎ノ有モノハ、假令腹痛ナクトモ雑病乾嘔有テ
諸治効ナキニ决シテ効アリ。
腹痛アレバ猶更ノコト也。又此方ハ半夏瀉心湯ノ黄ゴンヲ桂枝ニ代タル方ナレドモ其効用大ニ異ナリ、甘草、乾姜、桂枝、人參ト
組タル趣意ハ桂枝人参湯ニ近シ。
但彼ハ恊熱利ニ用、此方ハ上熱下寒ニ用ノ、黄連主薬タル所以也。按ニ此桂枝ハ腹痛ヲ主トス。即千金生地黄湯ノ桂枝ト同旨也。


黄連湯解説

この漢方処方は傷寒論に見られ、傷寒論では熱病に感染後に胸に熱感があり、胃に邪気(寒邪)があり、腹痛と嘔吐がある者は
黄連湯の適応症です。と記載されています。

勿誤薬室方函口訣では傷寒論には胸に熱があり、胃に邪気(寒邪)があると書かれています。
たとえば水毒証の者で舌に苔があり、丹田に熱があり、胸には寒がある者は張仲景の説では当てはまりません。
ただ舌に苔がある事だけ当てはまります。

黄連湯適応証の苔は舌の奥に行くほど厚みがあり、色は黄色く、舌に潤いがあり、つるりとした苔があります。この時腹痛は無く、
嘔吐の症状があり、色々試したが効果が無い時に黄連湯を用いなさい。腹痛があれば黄連湯の適応症でしょう。

黄連湯は半夏瀉心湯より黄ゴンを去り、桂枝を加えた処方ですが、効用は大きく異なります。甘草、乾姜、桂枝、人參を組み合わせた
趣旨は桂枝人参湯に近いです。ただ桂枝人参湯は
感冒性下痢に用い、黄連湯は上熱下寒に用います。
理由は上熱下寒の治療の主薬が黄連です。他に桂枝は腹痛を治します。と記載されています。

上記の文章に出ている「上熱下寒」の意味は胸に熱があり、胃に寒がある状態を言います。傷寒論に記載されているように
「胸部に熱と胃部に邪気(寒邪)があり、腹痛、嘔吐があれば黄連湯を用いなさい。」の記述に当てはまります。

黄連湯は半夏瀉心湯とよく似ており、黄連湯と半夏瀉心湯の違いは半夏瀉心湯には黄ゴンがあり、黄連湯には黄ゴンが無く、
黄ゴンの代わりに桂枝を加えた点です。生薬の黄ゴンは寒剤で裏熱を取る作用があり、生薬の桂枝は温剤で裏寒を取り去る
温薬の作用があります。

半夏瀉心湯は嘔吐と下痢に用いられるが、黄連湯は傷寒論にも記載されているように嘔吐と腹痛に用います。
黄連湯は名前の通り黄連を主薬としているので急性胃炎、食中毒の腹痛に効果があると思います。
その時に舌に厚い苔が見られる事があります。


黄連湯適応証

@ 太陽病から少陽病の体質で中間証の場合が多いです。

A 半夏瀉心湯の適応症と似ていますが半夏瀉心湯は下痢が主訴で、黄連湯は腹痛が主訴です。

B 症状は半夏瀉心湯と同じく心下痞コウ、悪心、嘔吐、腹痛、舌に白苔、便は便秘又は下痢などの症状です。

C 便秘する場合は黄連湯に大黄を加え、下痢する場合は茯苓を加えれば良いです。

D 以上の症状から黄連湯の適応疾患は
  ・急性胃炎、胃腸炎、胃潰瘍
  ・食中毒
  ・二日酔い
  ・口内炎
などに適応されます。


各生薬の役割

黄連湯に含まれる生薬は体を温める物が多く含まれております。
黄連は消炎、解熱、健胃、下痢止め、鎮静、心下の痞えなどを解消する作用があります。

人参には健胃、食欲不振、腹痛、下痢の解消する作用があります。

半夏は健胃、胃内停水除去作用があり、嘔吐感を抑制します。

乾姜は胃部を暖め、半夏と同じく健胃、胃内停水除去、嘔吐感抑制作用があります。

桂枝は発汗解熱、鎮痛作用があります。

甘草は鎮痛、諸薬の働きを調和の作用があります。

大棗は利尿、鎮痛作用があります。


参考処方

実証・・・・大柴胡湯、四逆散など

中間証・・猪苓湯、茯苓沢瀉湯、半夏瀉心湯、柴胡桂枝湯、五苓散、
      小半夏加茯苓湯、大建中湯など

虚証・・・・小建中湯、茯苓飲、安中散など


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